Amazing DoCoMo
驚くべきドコモ

BUSINESSWEEK : JANUARY 17, 2000

訳:野村正

事前注釈:
 iモードはNTTドコモが99年2月から提供を始めた携帯電話による文字情報サ ービスのこと。携帯電話からインターネットに接続して電子メールの送受信やホーム ページのブラウジングができるほか、銀行振り込みなどのモバイルバンキングやチケ ット予約、書籍の注文、各種情報サービスの受信などができます。
 通信料金は送受したパケット数に課金される従量制で、情報サービスは一部有料で す。
IDOのEZアクセスやDDIセルラーグループのEZ webは、iモードに対抗した サービスです。
iモードの特徴は、iモード向けコンテンツの開発のためにコンパクトHTMLとい う独自の記述言語を採用したことで、これは、WWWの記述言語であるHTMLとの 親和性が高いため、インターネットでホームページを開いている人なら、簡単にiモ ードのためのコンテンツを作成できます。そのためiモード向けの個人サイトがすで に立ち上がっています。
 今後世界標準となるであろうWAP(wireless application protocol 携帯電話な どの携帯端末からインターネットを利用するための通信規格)
 99年4月からIDO、DDIがWAPを利用する情報提供サービス、EZアクセ ス、EZweb を開始、WAPは世界各国で導入が進んでいるので、海外のコンテンツ も見れます。ただし、HTMLとの親和性はないので、WWW系のホームページを見 ることは出来ない。)の導入もNTTドコモは検討しています。

本文
 ドコモは日本全国をカバーする携帯電話サービス企業で、世界を征服するかもしれ ないすごい会社です。日本のティーンエイジャーが外出するときの必需品は、厚底靴 とその日のお気に入りのヘアカラーセットとiモードです。日本人なら誰でもiモー ドといえば、NTTドコモの白い携帯電話のことをさします。ドコモの由来は、日本 語の「どこでも」のもじりで、日本中どこへでも安く掛けられ、途切れないインター ネットアクセスを提供します。
 ヨーロッパでも携帯からネットへ入れます。そして、多くのアメリカ人もスリー・ コム・コーポレーションの「パーム VII」を使って似たような恩恵を受けています。 しかし、これらのシステムからインターネットへつなげる場合には、ダイアルアップ を設定しなければなりません。iモードの場合は信号が受信可能状況で電池が切れて いない限り、常にインターネットにつながっています。この強い接続により、利用者 は常にウェッブを基本にしたサービスを受けられることになります。つまり、Eメー ル、チャット、ゲーム、星占い、カレンダー、特製ニュース放送などのサービスで す。
 iモード利用者は4000もの特製ウェッブサイトを利用できます。今後、iモー ドに関して、この企業が提供するサービスや株、iモード現象を引き起こした人々の ニュースを世界中の人が聞くことになるでしょう。
 元々は日本の電話を独占していたNTTの一部から分離したドコモの株は1992 年に急成長します。ドコモ株の高騰は、6月の1万3千ドルから一気に3万5千ドル まで上がり、3,350億ドルといわれている市場の中で、もっとも期待される携帯 電話会社となりました。
 当時の地球上でもっとも進歩した携帯電話でした。合計すると2,710万人の利 用者を持ち、この数字は単一の国での利用者数としては、世界最大です。今日、NT Tのiモードは世界で唯一、携帯電話経由でインターネットに常時アクセスしている ネットワークです。
 サンマイクロシステムズのビル・ジョイ主席科学者が言っています。「ドコモは、 300万人以上の日本人が加入している日本最大のインターネット・サービス・プロ バイダです。」また、ニュージャージーのAT&T 研究所の無線システムリサーチ部長 ネルソン・ソレンバーガー氏は「ドコモは米国の多くの人を驚かせた。一般携帯電話 サービスでこれほどの規模は見たこともない。」と言っています。

「巨大市場」

 日本人の多くがドコモを新世代の発明品を象徴していると見ているのも不思議では ないでしょう。
 是非日本には、インターネットの世界市場での競争に参加してほしい。アメリカの AT&Tやモトローラは、モバイルデータ通信での周波数帯の規格などの論争や今後のウ ェッブ・サーファーの動向が携帯電話に行くのかパームトップコンピュータに行くの か等で侃々諤々の様相を模しています。
 日本では、すでにドコモが先陣を切って巨大市場の存在を証明しています。多くの 消費者にとっては、技術が完璧でなくても関係がないことも証明しています。将来ド コモは世界市場において、ヴォダフォン・エアータッチやAT&Tやブリティッシュ・テ レコムのようになるでしょう。
 モバイルインターネットが期待通り活発になれば、ドコモは世界でもっとも強力な 無線電話企業の巨人になります。そうなるためには、ドコモがこの新しいサービスと ビジネスを強力に安定し続けられることを証明しなければなりません。今iモード は、いろいろなクールな機能を利用者に提供しています。
 シリコンバレーやスカンジナビアでは、友人同士が90グラムの携帯電話で自分た ちのペットの写真を交換し合うことが出来ません。日本ではいつも簡単にしているこ とですが。もっともこんなことで、ドコモがいつまでも世界での競争において優位を 保つことは出来ませんが。
 ヨーロッパとアメリカの携帯電話の大物たちが、アジア33億人の潜在的市場に食 指を動かしています。11月にはヴォダフォン・エアータッチとブリティッシュ・テ レコムが日本テレコムとの共同で次世代モバイルを始める計画を発表しました。

「ファミリーの団結」

 ドコモのカリスマ的社長、立川氏はあまり驚いていないみたいです。彼は、主にア ジアに拠点を置く企業を考慮しており、穏やかな関係のネットワーク競争で戦う計画 をもっています。これはヴォダフォン・エアータッチのアジアでの敵対的なやり方が 失敗するであろうとの立川氏の賭です。このような戦術をしないで、ドコモは資金と 最新技術テクノロジーによりアジアでの支持を得る計画です。
 立川氏は勢力拡大のための膨大な資金を持っています。99年度には、50億ドル の経常利益、36億ドルの歳入を見込んでいます。より重要なことは、ドコモがかつ て日本株式会社として言及された有力な遺産を受け継いでいることである。
 70年代から80年代にかけて、NTTとその系列である強力な設備供給企業の富 士通、NEC、日立は、日本の産業政策の成功を具体化した企業であります。この政 府が引率してきた産業形態は、日本の長い不景気の中で負債のように思われてきまし た。しかし、今日ドコモのような新参者がしっかりした内容と設備、サービスを提供 できるのは、これらの古い系列を利用できたからです。
 巨大なNTTは、いまだにドコモを67%所有しています。両社のマーケット資本 を合わせるとありそうもないことを可能にできます。
 同時にこのものすごい評価は、将来ドコモ自身が合弁や買収を計画するときに役立 ちます。長い間の不景気による激しい打撃は、日本のモバイル器具や受話器のメーカ ーにこのような将来性があることに気が付かなくさせていました。
 モバイルオフィス協賛組合によると携帯電話の市場は99年の180億ドルに対 し、2003年には1000億ドルにまで拡大されることが見込まれています。ハー ドウェアを除外しても2003年の携帯電話市場の60%は携帯インターネットサー ビスによって生み出されるとしています。モバイルネットが世界的に動き出したと き、今日の優位性が日本をこの市場でのリーダーシップにさせるでしょう。
 ドコモの革新者たちが規格でライセンスの権利を持つと思われます。そして、これ らのメーカーがインターネットの傘の下で世界市場に足を伸ばすでしょう。
 日本はキーボードに不慣れな国民性のため、長い間パソコンとインターネットへの 参入が米国に遅れていました。しかし、個人的な電子機器は別です。世界に電算機か らウォークマン、ポケットテレビ、ゲームボーイやビデオカメラを送り出した国で す。何百万もの日本人は、ビデオとポケットコンピューターゲーム(いわゆる押しボ タン世代)で育ってきました。今、その多くはホームコンピュータとネットにつなが った携帯電話で生活をしています。彼らは、新しいネット器具の最高の実験場を形成 しています。

「ヘッドハンティング」

 ドコモがいつも順調だったわけではありません。実際、巨大企業NTTの中で長い 間くすぶっていました。
92年にNTTから分離するとき、NTTの何人かがモバイル事業参入を望みまし た。当時、移動電話の市場は閉ざされており、弁当箱ほどの大きさの電話機で、加入 料金も高価でした。他にも、新技術として、日本では携帯電話と称するパーソナル・ コミュニケーション・サービスが他のデジタル電話システムを押しのけている時期で した。
 94年、郵政省が携帯電話市場を自由化しました。DDIやIDOやTU-KAなどが国内 で、使用料の価格競争を行っていました。NTTから引き抜かれたドコモのエンジニ アは、世界最小の携帯電話を開発するために富士通や松下通信などの受話器メーカー と規格を共有化しました。
 ドコモは、「ドコモちゃん」とよばれるマスコットとともにドコモショップの全国 展開を行います。ドコモのデジタルサービスが順調に伸展する間、大星初代社長は音 声通信事業からデータ通信事業への拡大を模索していました。それは電気エンジニア の榎木氏の仕事となり、彼自身がヘッドハンティングをするという日本では希なこと を行いました。最初に仕事情報の出版社リクルートの重役で、多くのビジネスを成功 させた記録を持つ松永氏を引き抜き、彼女の助けで日本オンライン事業の先駆けでも あるインターネット起業家、夏氏を3人目の主要メンバーとして勧誘しました。

「モバイル・モデル」

 激動の数カ月後、次の目標である無線でのインターネットアクセスを可能にするた めに、ドコモのエンジニアは既存のデジタル携帯電話ネットワークと平行してパケッ トスイッチ・ネットワークを構築しました。パケットシステムとは、配線交換電話ネ ットワークに対し、個々の利用者は受信するための独占チャンネル権を必要としませ ん。要するに利用者はチャンネルを選択しなくてもみんなが同時にネットワークにア クセスできるということです。通話料がデータの送受信の量をもとに請求するのであ れば、パケット形式にすることで、コストを削減できます。
 夏野氏はこのシステムでビジネスが運営出来るように工夫しました。最初に利用者 がiモードのメニューから直接アクセスできるコンテンツ・プロバイダーをラインナ ップし、iモードがサイトとして提供できるように指示しました。そして、サービス 手数料を(プロバイダ等の)代わりに回収してドコモがそこからコミッションを受け 取る方法を確立しました。それ以外のコンテンツ(メニューに載っている)所有者も iモード上にウェッブページをコード化するように奨励しました。あくまでもライセ ンス契約をしたコンテンツのみメニューからアクセスできます。「インターネットは 自由でなければならないと言う、我々はそのために努力している。」と夏野(34 歳)は言う。「これは、他の企業が参入したがっているモバイル・インターネットの モデルです。」 立川社長は98年以来、低価格化の保証とiモードの普及を主張し ています。利用者は約4セントで250文字メッセージを送れ、同じ数のメッセージ を半額で受信できます。機能は可能な限りシンプルにすべきであると主張していま す。
「私は2回押すだけで、ドコモの株価にアクセスできます。」と立川氏は言います。
 60歳の社長が委任状を持ってドコモに来ました。彼は東大のエンジニアリングのPhDとマサチューセッツ工科大学のMBAを持っています。彼の経歴はNTTの重役で、80年代のNTT長期政策の責任者でした。彼はドコモの人達と直接(日本では希な)Eメールで会話を交わしていました。そして大リーグ(ニューヨークメッツのファン)とフットボールを見るのが趣味です。しかし、立川氏はiモードの蓋のごとく口を閉ざしていました。3月の会計年度の終わりまでには、500万人に達しているはずです。もしこのまま加速するならば、来年にはiモードはアメリカオンラインと同等の2,100万人になります。

「アニメとニュース」

 iモードは、すでに何百万人もの日本人をiモード中毒にさせました。iは英語の <information=情報> − 日本の若者たちが渇望しているもの。ティーンエイジ ャーは携帯の電池が切れるまで、メッセージのやりとりを行っています。学生やヤン グアダルトはオンラインでパスポートサイズの写真を見たり、iモードの画面で見れ るようダウンロードしています。
 デジタルペットのたまごっちやアニメのバンダイが人気漫画の配給事業をしていま す。60万人の利用者は、月に1ドルでこのサイトにアクセスできます。マグロ貿易 業者の高橋氏(30歳)は、2カ月前にiモードに転向しました。夜間勤務の時には これでニュースを見ています。
 大手貿易会社に勤める鳩山氏(25歳)は、最新のミュージック・チャートや株 価、サッカーの試合結果を常にチェックしています。「どこでも簡単に情報にアクセ スしたい。」と彼は言います。
 iモードは初年度に1億ドル以上の歳入を見込まれていました。それは、携帯サー ビスの売り上げと比べればほんのちょっとの額です。5百万人の利用者で、加入料、 データ送信、ウェッブ関連のプロバイダからの9%コミッションなどの諸費用として 15億ドルを生み出すと、立川氏は見積もりました。
 iモードの成功は、ドコモを次の目標である「3G:第3世代の革新技術」無線通 信プロトコルの一種で超高速通信を可能とします。アメリカでもまだその最終規格が 決まっていません。日本とヨーロッパでは、ワイドバンドCDMAと称されるもの で、具体化を検討しています。この技術により利用者は、動画を見ることが出来ま す。その他にも新しいネット技術として2003年までには、1秒間に2メガビット のデータ転送速度を可能にします。現在の9.6キロビットと比較して下さい。ある 意味ではこれらの新技術はドコモの現在持っている優位性を奪うかもしれません。最 終的には、ヨーロッパとアメリカも新しい3Gプロトコルに飛びつくと思われます。 そして、新サービスは今日iモードで出来ることよりもよりいっそう派手になるでし ょう。しかし立川氏はドコモが法外なコストをかけないで、次の世代へのサービスと 専門知識を継承すると主張しています。「今日のドコモの興奮は序の口にすぎない」 とNECの西垣社長が言っています。「3年後にはみんながiモーhを使ってい る。」

*注釈:
 CDMA code division multiple access 符号分割多元接続方式の略称で、米軍が開発しアメリカのクアルコム社(Qualcomm Corp.)が商品化したデジタル携帯電話方式の一つ。日本では、DDIとIDOが98年7月からcdmaOneというCDMAの一方式を採用したサービスを開始しています。
 この他にも次世代携帯電話システムとしてIMT-2000, W-CDMAなどが、続々出てきています。

 ドコモは、この業界でリードし続けるために異常なピッチで研究を続けています。 横須賀にある最新技術研究所では、約700名のエンジニアが CDMA規格に基づく通 信機器、携帯電話、パームトップ、カーナビ等のテストをしています。ドコモは、独 自の理論により高次元の開発を進めています。ヨーロッパが同じ方向に傾倒してきた ので、ドコモに対し高い評価をしています。
 立川氏は、日本の内外の他の事業者がドコモの広域帯CDMAシステムに切り替え て利用してもらうことを望んでいます。世界中にW−CDMA広がることにより、訴 訟問題等を起こさないでiモードが広がっていくことを望んでいる。

*注釈:
 W−CDMA wideband CDMA は、ITU国際電気通信連合が標準化を進めるIMT−2000に向けて、日本とヨーロッパが提案した広帯域のCDMA方式携帯電話システム。
 移動時で384Kbs、静止時で2Mbsの高速通信が目標で、動画の伝送もできるマルチメディア通信です。無線インターフェースはNTTドコモが開発した技術がベースとなり、交換ネットワークなどのインフラ部分はヨーロッパ標準のGSM(ヨーロッパ全域で使えるデジタル携帯電話システム)がベースとなる見込みです。

 最近香港最大手の携帯事業ハッチソンテレコム(Hutchison Telecom)の株を19 %獲得しています。これによりハッチソンはiモードサービスを開始し、ドコモの 「3Gシステム」も取り入れていく計画を発表すると予想されています。他もこれに 倣うことを希望しています。ドコモは、3Gのテストをマレイシア、シンガポール、 及び中国で行っていますので、投資によって香港のようにiモードを取り入れるかも しれません。

「コンバート」(転向)

 立川氏は、ヨーロッパやアメリカを無視しているわけではありません。3月には、 サンマイクロシステムズに出向き、ジャバのプログラムをこの秋に出すiモードに取 り込むための協議と来年度発売予定の3G装置の協議を行っています。
 10月には、立川氏とマイクロソフト社のスティーブ・ボウルマー社長とが「モバ イマジック」と称する日本のビジネス市場向け無線データ通信サービスの開発合弁事 業を設立することで同意しています。もし新機能とサービスが日本で始まるならば、 それらを海外でも広めたいと立川氏は希望しています。
 11月には、日本の「W−CDMA」規格を米国に広めるためと研究開発のために 2つの米国子会社を、シリコンバレーに設立します。ドコモの協力者はすでにドコモ のシステムに転向しています。たとえばマイクロソフト社は日本でドコモと一緒に無 線データ業を最初に行っているとボウルマー氏は、言っています。「我々の無線イン フラストラクチャーがしっかりと立ち上がったときには、合衆国で利用されることを 望みます。」と最近東京で演説したときに話されています。
 モバイルインターネットが始まるとき、ドコモは新しい市場で他の競争者に勝ち残 らなければなりません。合弁狂の間では、モバイルインターネットという新ビジョン に触発され、無線通信の世界を一掃することを考えています。昨年10月には、MC Iワールドコム社がスプリント社を買収し、英国のヴォダフォン・エアータッチPL C社は、ドイツのマンネスマン社を吸収したりとこの数カ月間は同盟と合弁の嵐が吹 きました。
 このような厳しい環境では、競争者はますます過激になってきます。ドコモの競争 相手は、今の所本国内のDDIとIDOで、両社が占有する携帯電話の市場は27% だけです。2社ともドコモとは違う規格の携帯電話を売り込んでいますので、余りこ のような環境での免疫がありません。この2社は、iモードに対抗するモバイルネッ トサービスのためのパケットネットワークを売り込み始めています。
 日本が征服している他のポータブル電子機器市場よりも遥かに巨大な可能性がある 市場に、ドコモは最初にして最高の状況でたどり着いています。計算機やビデオなど は複合体としての機能やインターネットを基盤としたサービス、新しいビジネス形態 を形成したり、キャピタルファンドの事業などとの接点を持っていません。しかし、 モバイルインターネットはこれら全てとそれ以上の可能性を秘めています。 
 ドコモのおかげで日本は、巨大な市場を目前にしています。

注釈:MCI World Com Inc. 及びSprint Corp. は米国の長距離通信事業会社

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