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昨今はすごいイタリアブーム。ある国がこんなに流行になってしまうというのは日本ら
しい気もしますが、とにかくデパート、レストラン、雑誌、何でもイタリアだらけといった感です。
ところで、近頃あるイタリア人と知合いになりました。彼は29歳、ミラノでコピュー
タープログラマーとして働いています。もともとは、ウンブリア州というイタリア中部
地方の出身。人口600人ほどの小さな村で生まれ育ちました。ペルージャ大学を卒業後、ここ数年ミラノで働いています。イタリア人というと、皆明るくていい加減というよ
うな印象がありますが、彼はとっても真面目人間。週末も家に持ち帰って仕事をしてし
まうほどです。でも、私が驚いてしまうのは、彼が毎週末5時間をかけて電車で故郷に
帰るということ。毎週末です!「ミラノみたいな灰色なだけな場所では、ほっとできな
い、自分の村はウンブリア一と言ってもいいくらいきれいだし、一番心地よくいられる
場所なんだ。」イタリア人のお国自慢は有名ですが、それにしても本当に徹底していま
す。
一方、私の日本の田舎を持つ友人たちは、年にお盆とお正月で二回田舎に帰ればいい方
、という人がほとんどです。ましてや、田舎の自慢をしている話など聞いた記憶はあま
りありません。もちろん、もともと自慢するというのは日本人には顕著な性質ではあり
ませんが。しかしながら考えてみると一般的に、"田舎者"とか、"地方出身"とか、日本
では田舎という言葉に否定的なニュアンスを含むことさえあります。
このイタリア人と、日本人の故郷に対する想いの見事なまでの対象性が、そのまま二つ
の国の現在のあり方に現れているよう...。イタリアはもともと100余年前まで都市
国家の集合体であったという歴史もあり、地方の顔がそれぞれとても豊かです。食べ物
、人々の気質、家々の建築スタイルまで、何百年もにわたってその個性が今日に至るま
で人々の生活の中に受け継がれているようです。日本もかつてはそうだったのかもしれ
ません。が、今日では残念ながら日本全国金太郎飴のような都市開発が行われてしまい
ました。東京一極集中も声高に言われるだけでいっこうに解決される気配がありません
。
そこで、イタリアブームの話に戻りますが、旅行業界でも目的地はイタリアがナンバー
ワン、飛行機の切符を予約するのも大変だという話も聞きました。住環境が悪く非人間
的な暮しが強いられる都会でふだんあくせく生活しながら、一年のうちのほんのわずか
な間休暇がとれるというと、日本人がその多くを失ってしまった祖先からの共通遺産を
しっかりと受け継ぎ続けているイタリアに、その足に地の付いた人間らしさを味わいに
行くのでしょうか? と、ちょっと考えすぎかな。
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